本文記事だけで、できるだけ完結しようと考えている「私はこう見る」では異例のことですが、補足記事をお送りします。
前回の「陳列」の読者の声をたくさん頂きました。いつものように活発な意見が出て大変嬉しかったのですが、同じご指摘が相次ぎました。
| 「決まった本を探すだけが消費者行動ではない。ぶらぶら見ながら興味ある本を見ることもある」 |
記事が舌足らずだったことが災いして、ケンカ腰のメールまで頂いてしまいました(笑)
皆さんの問題意識に回答する形での執筆なので、ちょっと手厳しくはなりますが、ご容赦下さい。
陳列はぶらぶら購入でこそ必要なもの
ご指摘はそのとおりです。生活者の行動で、ぶらぶら見ながらの書籍購入は確実に存在します。
しかし、ぶらぶら購入だから、陳列について寛容で良いわけではありません。むしろ、ぶらぶら購入でこそ陳列の選びやすさが重要になります。
まず先に例を出してしまいましょう。
例えば、指名買いの極めて多いたばこの場合、
●自分が欲しい銘柄が決まっている時は「マイルドセブンちょうだい」とキオスクの従業員やたばこ屋さんの店番に言うだけで事足ります。この時、客は在庫棚にたばこがどう並んでいるのかを知る必要はありません。 陳列は彼にとってまったく不要なものです。 |
| ●一方、新しいたばこを試してみたいが、どれにするかが決まっていない時は、陳列が必須になります。そして、銘柄が国別に並ぶのか、ニコチン・タール別に並ぶのか等、陳列の区切り方は非常に重要になります。 |
もう一つの例を出しましょう。
みなさんに身近なインターネットのサーチ・エンジンでも同じ事が言えます。
何でもかんでもキーワード検索をする上級者は別にして、一般的には
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●「なんかおもしろいホームページがないかな」 「自分の知りたい分野のホームページにはどんなものがあるかな」 という時には、ジャンル別のページが便利です。
ちなみに、上級者はこのような時でもキーワード検索を使います。 ジャンルを次々に探索する時間がもったいないのと、既存のジャンル分割が彼らにとって不便だからです。
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●「自分が知りたいホームページがあらかじめ決まっている」 時はキーワード検索が便利です。 その時には、それぞれのホームページがプロバイダのサーバー・コンピュータにどう並んでいるか等、知る必要はまったくありません。 |
最近、「シストラット」というキーワードで検索し、この記事やシストラットのホームページにたどりつく方が増えています。「シストラット」という単語さえわかっていれば、ホームページにアクセスできます。シストラットがコンサルタントだろうが、メーカーであろうが、はたまた個人であろうが、そんな情報は不要です。
でも、ヤフー等のジャンル別検索サイトでシストラットのページを探そうと思ったら、シストラットの名前だけでなく、この名前の存在が企業であり、かつマーケティング・コンサルタントであることを覚えておかなければなりません。覚えることが2つ増えてしまいます。
その上で、それに見合ったジャンルを探さなくてはなりません。行動が1つ増えてしまいます。
ちなみに、ヤフーではシストラットはマーケティング分野に登録されていません。経営コンサルティング分野です。なぜなら、ヤフーのマーケティング分野にはコンサルティングという概念がなくなってしまっているからです。
マーケティング分野には「一般的には戦略立案機能がない」と解釈されている調査会社ばかりが登録されているのです。
「戦略立案をするような会社はないかな」と探している人にとって、ヤフーの経営コンサルティング分野は最初に覗く項目ですが、マーケティング分野では調査会社のリストの山に埋もれてしまう可能性があります。
戦略立案を専門とするシストラットにとって、どちらに登録するのが良いか。議論の余地はありません。
シストラットをヤフーで探そうとすると大変な手間と努力、そしてちょっと多めの記憶力が必要となりますが、キーワード検索なら一発です。
書店ならこうなる
書店に当てはめると、こうなります。
万が一、ある大型書店が本を客にとってはほとんど意味がない順番に並べていたらどうでしょうか。例えば、入荷日付順です。
そこには、「ブランド戦略」のとなりに「ファイナルファンタジー8最終攻略」「必ずやせるアロエダイエット」が並んでいます。
もし、書店が自分の在庫をきちんと把握していれば、指名買い客はカウンターに行って、目的の本を持ってきてもらえば事足ります。その客にとっては陳列がどう並んでいようが、まったく無関心でいられます。
ぶらぶら買いで、いくら「いろんなジャンルの本が見たい」というニーズがあっても、こんな並び方で80万冊の在庫があるのでは途方に暮れます。
いや、現代人はぶらぶら買いにあてられる時間も限られます。3時間も4時間も時間がとれる人はかなり限定されるでしょう。
ぶらぶら買いは「いつもはビジネス・コーナーに行っているけど、今回はエッセイも見てみようかな」という「ブロック発想」で行われます。それだけに、「ジャンルの区切り」は必要かつ重要なのです。
書店の指名買い対応機能の欠如
書店に限らず、一般的に小売業は客が「指名買い」をしたい時のきちんとした対応機能を持ち合わせていません。例えば「指名買いカウンター」「指名買い要員の店員さん」は存在しません。
だから本来はそれに代わる陳列に力を入れなければならないのに、書店はきちんできていないことが問題なのです。
書店で「指名買い」をしたい時、「一般的な作業を行う」店員に「余計な」リクエストをしなければなりません。一般小売店の場合は店員が「兼務」していますし、店内をうろついていますので、気楽に「●●はどこですか」と聞ける「雰囲気作り」をしています。
しかし、大型書店などでは店員はほとんどカウンターの中に常駐しています。店内にいても、それは、客の要望を聞くためではなく、在庫の補充をするためです。ですから、足早に店内を動き回り、腰をかがめてストックから本を取り出すのが彼らの行動です。気楽に話しかける雰囲気ではありません。
少なくとも一般の商店で良くある光景の「何かお探しですか」と近寄ってきたり、「いらっしゃいませ」と目を合わせてくるような、大型書店の店員にはお目に掛かったことがありません。
中にはあからさまにイヤな顔をする店員もいます。「こんな忙しい時に対応できません」と言われたこともありました。
それらはすべて、書店が「指名買い」を本業の機能としてではなく「付加業務」として考えているからです。
本の並びが頭に入っていない店員に話しかけてしまった日には、面倒なことになってしまいます。店員自身も私が欲しい本がどこにあるのか、いや、自分の店で扱っているのかどうかすらわかりません。そこで、先輩や上司に聞くことになります。
しかし、従業員同士だときちんと教えてくれない場合があり、「どっかその辺だよ」と言われ、彼は陳列棚に直行します。その間、私は延々と待たされたあげく、「うちでは扱っていません」と言われます。
時にはその後「仕方がないから別な本でも探そうかな」と思って陳列棚を見ていたら、本来欲しかった本が見つかった、という経験は
Surfrider さんだけなく、良くあることです。
彼らの行動だけを見ていると、がらくた市やジャンクショップのようなところで「おじさん、▼▲なぁい?」「良くわかんないからさ、その辺探してみてよ」という会話と良く似ていることに気がつきます。極めて原始的な商売の方法です。
「ネット検索をなぜ使わないか」といぶかる読者もいらっしゃるので補足します。
一般的に客が知りたいのは「今、買えるかどうか」です。書店側も現在手もとにないと、他の書店に逃げられてしまうことを恐れます。自分の書店にその本があるかどうかの情報はネットでは検索できないことがわかっています。だから、直接、陳列を探すのです。
販売現場ではネット検索は最後の手段として、その本が実在するかどうか、入手可能かどうかを調べて「取り寄せ」を客に伺うためのものなのです。
商品を選ぶ行為は指名買い、ぶらぶら買いの両方が存在します。
小売業の基本は客に商品を選んでもらうことです。なのに、その方法のひとつしか提供せず、しかも、記事で指摘したように極めて選びにくい提供方法しかしていない書店は、小売業として未成熟あるいは低付加価値のスペースブローカーと言われても、仕方がない業態です。そして、そのことが今回の記事の趣旨の一つなのです。
ぶらぶら・指名、たった2つのニーズに対応できない、ぬるま湯業界
ではなぜ真剣に取り組まないか。
理由は簡単です。店員ですらどこにあるかがわからない状態ですから、「何かお探しですか」なんて聞いていたら、客からの依頼が殺到し、人件費がかさんで利益が出ないからです
(笑)
逆に言えば、客に店員の代わりをやらせているのが、大型書店だというわけです。
そういう業態はほかにも存在します。スーパーやディスカウント・ストアのセルフ店です。ただし、その分価格が安いのが客にもわかりますから納得づくです。書店はそうではありません。
「種類の数が多いから店員が把握するのは無理だ」という声が聞こえてきそうです。書籍業界の人たちの常套文句です。
だったら、「私」の興味のある本だけを扱っている本屋を作って欲しいのです。そこは、小さくても結構。でも、店員や検索システムがきちんとしている。
そう無理を言っているつもりはありません。
現在の書店は「全部百貨店状態」です。小さな書店は「よろず屋」。
でも、一般店では専門店も元気です。書店業界だけが百貨店とよろず屋しかないのは、どう考えてもおかしい。
「一般の商品は肉と洗剤というように商品の形が違うから楽だ。本は皆同じだから難しい」と言われたことがありました。
専門店はその分研究しています。努力しています。
同じ「洋服」を扱う店だから品揃えが同じになる、訳ではありません。
ターゲット顧客を考え、彼らの欲しいものをつかみ取り、たくさんある洋服の中からそれに見合ったものを仕入れる。でも失敗すれば倒産の憂き目にあう。これが努力です。小売業なら当たり前のことです。
書店だけが「本には種類がたくさんあるから、仕入れるものを選ぶのは難しい」と言い訳をして許される時代ではありません。
事実、その発想でまんが専門店ができました。
きれいな古本屋チェーン「ブックオフ」も盛況です。
書店だけが特別扱いされる理由はどこにもありません。だって、ビジネスは生活者がいて成り立つものですし、洋服屋の生活者と書店の生活者は同一人物だからです。
唯一違うとすれば、長年の慣習で「書店の生活者」は書店業界にあきらめさせられ、飼い慣らされていることだけです。
誤解のないように付け加えますが、私はこの記事を書店業界に反省して欲しくて書いているのではありません。
皆さんに、この業界を反面教師として「陳列とは何か。人の選択の思考過程にあわせることがどれだけ大事なのか」を学んで欲しいだけです。
というのも、書店業がそう簡単に変わるとは思いませんし、変えるつもりがあるとも思えないからです。
実際の集計ではゲーム攻略本と大川隆法の本がトップテンの上位に食い込むのに、書店業としてのプライドが許さないからとあえて外し、平気で20位くらいの文芸書を7位や8位に持ってくる。そんな嘘の固まりで、事実から目を背け、客も自分もごまかしている書店業界に変革の意志があるとは到底思えないからです。
ちなみに、調査業界では数字の改ざん(メーキングといいます)をやったことがばれた調査会社は、永遠に業界から追放されてしまいます(笑)

今回は、記事を短くしようとしたあまり、舌足らずになってしまいました。
反省いたします。
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