【参考】■いそがしいのは誰のせいだ。あっ、僕のせいだ

「Aタイム」の肝だけをご紹介

まず、「敵を知り、己を知る」の「己を知る」ところから始めます。
「Aタイム」で、私が最も重視しているのが「WFA(Working Factor Analysis = 作業要因分析)」です。
名前は何やら小難しいですが、要するに

「自分の現在やっている仕事を分単位で細分化してみる」

という作業です。

ビジネスマンはいろんな仕事をしています。
電話をする、受ける、コピーする、会議に出る、上司を説得する、資料を作る。
その上に、待つ、トイレに行く、雑談する、コーヒーを飲む等、作業自体ではなく「作業を円滑にするための補助的な行動」もあります。

「あなたは、1日にコピーする時間は何分ですか?」

と聞かれて、「12分です」と答えられるような人はいません。それがちゃんと答えられる人には「お〜い。君は本当に仕事をしているのかね」と言いたくなります。
でも、第一歩はそれをするのです。
自分の1日の仕事とそれにかかった時間を逐一メモすることが「己を知る」です。

項目は

●仕事の内容
●相手
●かかった時間

の3つです。

大変な作業です。面倒です。 でも、「プラス100時間が自分のものになる」と暗示をかけて頑張りましょう。

とはいうものの、面倒なことには変わりありませんから、私はメモ専用の紙片を胸ポケットに忍ばせておき、1つの仕事が終わるたびになぐり書きで、

「tel 森 2:21〜」

などとメモするようにしています。

「後でまとめて書けばいいや」なんて考えてはいけません。1分や2分のちょっとした作業なんてすぐに忘れてしまいます。その場で書くのがコツです。
ただし、ちょっとズルをしましょう。
例えば、コピーをする時、1枚程度なら「1分」と決めておきます。すると、メモは「コピー」だけで済みます。時間を書く必要はありません。

これを3日間続けます。
タイミングは「普通の日」を選ぶことが大切です。特別なプロジェクトがあったりすると、忙しすぎて普段の日とはかけ離れた結果で出てしまいます。
日数については3日以上でもかまいません。しかし、私の経験から言うと、3日間以上もこういった細かい作業をするのは骨が折れます。逆に、1日や2日では「忙しい日が続いた」「暇な日が続いた」と偏りが出てきてしまう。3日間がちょうど良い長さです。

さて、このデータを使って、後々さまざまな分析するわけですが、1日の終わりに楽しむのはメモの件数です。

●1日30件以下なら「幸せ」です。充分に自分の時間が取れています。
●1日60件程度なら「普通の忙しさ」です。
●1日80件を越えると「目の回るような忙しさ」のはずです。赤信号。
●1日100件を越える人は、「危機的な状況」です。忙しいを通り越して「混沌」「混迷」状態です。まともな仕事ができるとは思えません。

3日間のデータのメモが終わったら、個々の作業に優先順位をつけます。1日60件の人は3日間で180件ありますから、その180件ひとつひとつに優先順位をつけるのです。

●Aランクは自分でしかできない仕事
●Bランクは1年くらい経験した秘書ならできる仕事
●Cランクはバイトでもできる仕事
●XA、XB、XCランクはそれぞれの優先順位だが緊急を要する仕事

Aランク、つまりこれが「Aタイム」ですが、「Aタイムの総時間が、全仕事時間の何%を占めるか」が最も重要です。「自分でしかできない仕事の比率」を上げれば上げるほど生産性と自分の価値が上がるという訳です。
目標は40%です。

普通の忙しい人が初めてWFAを実行すると、多くは15〜20%程度のAタイムしかありません。私の場合はまずここで愕然としました。
だって、誰でもできるような仕事に自分の時間の8割も使っているのですから。
このままでは私はいてもいなくても、どうでもいい人になってしまいます。

逆に、初めて作業をするのにAタイムが70〜80%もある人がいます。
これは、「大いなる勘違い」と思ったほうが良いでしょう。
「これは俺しかできない仕事だ」と勝手に思い込んでいるだけという状態です。
本当は、他の誰かに任せれば任せられるのに、自分で抱え込まないと気が済まない人によく見られる現象です。
他人が全部「アホ」に見えて、自分がやれば100%完璧だと思い込んでいる。

ランクは気楽につけてはいけません。
ここで、それぞれの仕事にAをつけるかBをつけるか。この判断自体がすでに時間管理なのです。
「大いなる勘違い」人は「70点主義」で他人に任せる(BランクやCランクに認定する)ように心がけましょう。
自分がやればできるレベルの70%ができれば、その人をほめてあげる。このことが身に染み付いていないといけません。

これらの作業を通じて、どうしても「これだけは自分で本当にやらないといけない」仕事が自ずと見えてきます。これが、Aタイムなのです。