■市場という概念【モバイルギア】

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モバイルギア大活躍

モバイルギアを買いました。
これがまた、すこぶる調子がいい。
喫茶店の中は元より、電車の中でも良く使っています(実は私はファースト・フード店のヘビーユーザーで、年間で100回以上利用します。待ち合わせのちょっとした時間や、簡単な食事のときに、つらつらとメモを取るんです)。

私の場合、企画の骨子を作るのは電車などの移動中です。これまでは、システム手帳に骨子をなぐり書きしていました。それを、マックで企画書にまとめ上げるのです。

電車の中の私の時間は、それだけではありません。中吊り広告は効率のよい情報収集となります。また、乗客の会話は生のデータとして、調査などの数字のバックアップになるだけでなく、現代の生活者の理解を助けたり、ニーズのヒントになったりと大活躍してくれます。

アイデアに詰まった時には、トイレに籠って一人になるのが良いとする人が多いようです。でも、どうも私は根っこが実務家だから、研究者さながらの「じっくり思考」が苦手です。「迷ったら現場に行け」は刑事だけの特権ではありません。マーケティング・コンサルタントの基本でもあります。だから、迷ったら、売り場にいくか街に出ることにします。前者は商品の現場、後者は生活者の現場です。

そうした中で、モバイルギアは格好の道具なのです。この文章も実際に電車の中で一気に書いています。

ザウルスの行方

さて、携帯電子機器というと、私は初代ザウルスをつい最近まで酷使していた人間でした(現在は出たばかりのザウルスポケットを早速購入して使っていますが)。

ザウルスを愛用するあまり、ザウルスを使った仕事術の本まで執筆してしまった私にとって、ザウルスの長所、短所は知り尽くしていました。それだけに、ザウルスで不満だった長文入力ができるマシンが欲しかったのがそもそもの始まりでした。

そこで、まず頭に浮かんだのはノートパソコンです。これならキーボード入力ができ、メモリもたくさん積めるので、長文入力には最適です。また、スケジュールや住所録ソフトを入れておけば、ザウルスでできることはすべてノートパソコンでできてしまいます。今はサブノートが盛んで、初代ザウルスの 350g というわけにはいきませんが、1kg を切る商品も次々に発売されています。従来のノートパソコンが下手をすると 3kg もの重さがあったことを考えると隔世の感があります。大きさも東芝のリブレットならビデオテープサイズです。私のかばんにも簡単に入ります。

こうやって見ると、あたかもサブノートパソコンはザウルスの置き換え、つまり、競合関係にあるように見えます。

ところが、実際には、ザウルスは顕在でした。理由は簡単です。わざわざノートパソコンを開いてスケジュール確認をするのは失礼だと思っているクライアントが多いからです。第一、スケジュールを確認する時に立ち上げまで待たせなければならないのでは、こちらも苦痛です。
また、ちょっとした電話番号を調べる時に、公衆電話の前や街角でPHSを持ちながら大きなサブノートを開くのは機動性に欠けるからです。ザウルスなら、パッと調べてスーツのお尻のポケットにさっと滑り込ませれば、すぐにいつものペースで行動できます。

むしろ、使用頻度が減ったのは、同じ携帯する電子機器であるザウルスではなく、オフィス内のデスクトップコンピュータ、PowerMac 8500 だったのです。長文を書くときに、今まではわざわざオフィスに戻っていました。しかし、モバイルギアを買ってからは、仕事や夜遊びの帰りにファースト・フード店で作業をすることが圧倒的に多くなりました。

かばん市場と電車の中市場という概念

イメージカット2実は、モバイルギアによってオフィスのパソコン以上に影響を受けたものがあります。かばんの中身です。

具体的にいえば、ノートパソコンを買おうか、かばんの中身の他のものをかばんから外そうかという「競合関係」です。

かばんの中身市場の争奪戦。これが、私にとってのモバイルギアの本質なのです。

モバイルギアに出会う前、つまり、ノート・パソコンを検討していた頃は、完全にノートパソコンの負けでした。つまり、かばんの中身を外すほどノートパソコンに魅力がなかったのです。

サブノートとはいえ、まだまだ重いし、かさばります。1kg という重さは単体で見れば軽いのは確かです。でも、私のアタッシュケースには様々な資料や雑誌、小物類が詰まっています。従って、重さは 4kg 近くになるのです。そして、これはもう限界の数字です。新たにノートパソコンの分の1kg を増やすわけにはいきません。が、モバイルギアはコンパクトで550g。これなら、工夫すればなんとかかばんに入ります。

だから、モバイルギアの本当の競合は、かばんの中の雑誌や本、資料なのです。そこで、まず犠牲になったのは当時350gもの重さがあった携帯電話です。これが PHS に変わりました。
雑誌もモバイルギアの影響を受けて、いつも 3~4誌かばんに入っていたものが、1~2誌に減っています。
特に、雑誌は別な市場での犠牲者でもあります。「電車の中」市場です。私にとって、それまでは、電車の中と言えば雑誌を読む時間でした。これが、モバイルギアで長文を書く時間に置き換わったのです。雑誌は「電車の中」市場でモバイルギアに負けて撤退したのです。

異業種間競合で新たな方向性を

異業種、つまり、一見まったく性質の異なる商品が、ある共通の市場の中で競合関係にある。こういう考え方をしなければ物事の本質が見えない時代になりました。

実はこの考え方は新しいものではありません。古くはウォークマンが「電車の中市場」で中吊り広告のシェアを奪ったし、100%果汁が「朝食市場」で牛乳からシェアを奪いました。また、ホンダが初代シビックを開発した時には「若者のサイフ市場」で、海外旅行を競合と想定しています。特に、現在は携帯電話が「若者のサイフ市場」で、他の異業種商品を次々に駆逐しています。

ザウルスがシステム手帳に勝ったのは、住所録やスケジュール等の機能が、より便利で使いやすくなったからのように見えます。これら2つの商品は従来の「競合関係」の定義に当てはまるからです。でも実は、ザウルスは「かばん市場」でシステム手帳に勝ったと考えると市場の新たな方向が見えてくるのです。
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