■サービス悪けりゃ、命取り【ファミリーレストラン】

日本の接客がアメリカよりひどくなった

喫茶店に中年男女が2人。そこに無愛想なウェイトレスが、コップをテーブルに叩きつけるように置くと、水がこぼれてしまう。そこで、2人、合唱。

「サービス悪けりゃ、命取りぃ~。
サービス悪けりゃ、命取りぃ~。」

ナレシーョン入る。
「苦情、最優先、ニッセン」

通信販売ニッセンの最近バージョンです。
私はわかりやすいニッセンのこんな広告が大好きです。
ニッセンの広告が笑えるのは、ああいったウェイトレスが健在だからです。
喫茶店、特に純喫茶タイプの、駅前のちょっと古い喫茶店では日常茶飯事の光景です。

私は滅多にそういう喫茶店を利用しません。料金には接客に対する対価も含んでいると明確に信じている私は、店長に苦情を言ったり、注文をキャンセルして退店したりすることが多いからです。トラブルが少ないファースト・フード店や安心できるチェーン店を利用します。

一体、いつからこうなってしまったのでしょうか?
1971年にマクドナルドが銀座三越1階にオープンした頃は、「画一的なマニュアルを読み上げるだけのような接客は不快だ」という趣旨の論調がまかり通っていました。事実、その2年後にアメリカにわたった私は、アメリカ人の無愛想さに日本の接客サービスの良さを再認識したものでした。

しかし、皮肉なことに今ではマニュアルでの接客サービスを提供している店が、最も心地好いサービスを提供しています。いや、逆に、ワイキキなどの観光地を除くと、飲食店や物販店では下手をするとアメリカの方が日本より接客サービスが良いのです。

事前了解の期待価値に対する価格差(仮)

接客サービスと満足度とは何なのでしょうか。
例えば、マクドナルドでは注文をしたものは客が自分で運び、席を探し、食器を指定された場所に戻します。でも、接客に不満はありません。むしろ、時々店内を歩く従業員が「ありがとうございます」「恐れ入ります」と、トレイを受け取り戻し場に戻してくれると「サービスいいよな」とさえ思ってしまいます。

一方、喫茶店では客は座っているだけ。注文は取りに来てくれるし、食器は持って来る。食器もそのままテーブルに置いて帰っても当たり前。でも、ウェイトレスが無愛想で注文に対して返事もしないとなると「不快だ」という感情が残ってしまう。

とりあえず今回は「事前了解の期待価値に対する価格差」と結論づけておきましょう。
ファーストフードのコーヒーは1杯180円。喫茶店は500円。差額320円の一部は椅子などの座り心地代金、その残りがウェイトレス代金。
だから、500円を支払うときには心地好い(でも、最低限の)接客サービスを期待します。それに反したことをやられると不満が残るわけです。

また、私たちはファーストフードがセルフサービスだということをあらかじめ了解しています。だから、自分でトレイを片づけるのは当たり前という意識があります。そこへ、それ以上の期待していなかったサービスに出くわすと、思わず嬉しくなってしまうのです。

その価格差に納得がいかない客が、ドトールなどの立ち飲みコーヒー店に殺到するという構造です。この点については、「価格をどうとらえるか」というテーマで、機会を改めてお話することにします。

ちなみに、マクドナルドでの接客は「すぐに注文したものが出てくる」ことです。
一方、モスバーガーはオペレーションの構造上それができません(正確には、創業当初は作り置きをするだけの客数が稼げなかっただけです)。その代わりに「ていねいさ」「作りたて」を前面に出すことで、マイナスポイントをプラスに変換しています。

顧客満足度No.1は東京ディズニーランド

先日、おもしろいデータが公表されました。
週刊ダイヤモンドが昨年から実施している「顧客満足度調査」です。

これは、接客、立地、価格、メニュー・品揃え、店内環境・付帯設備、特典を総合的に見て、顧客満足度を測ろうというものです。ただし、対象者は20~60才の女性のみです。

調査対象となった91企業中、トップは東京ディズニーランドでした。

納得の結果です。

その中で、接客評価のデータを見ると、極めておもしろい結果が見えます。
例えば、ホテルニューオータニやホテルオークラとマクドナルドの接客満足度がほぼ同じなのです。

細かく言えば、マクドナルドが分類される外食では「店員の接客態度が丁寧で迅速」だけの評価ですが、ホテル業ではその他に「何か問題があったときの対応が親切」という質問と合算した結果なので、直接比較をしてはいけないと週間ダイヤモンドは解説してます。ましてや、私達はマクドナルドにホテル並みの接客は求めていません。

でも、求めているものが違っても、その店を一歩出た時
「もう、この店になんか行くものか」
と思うか、
「また来よう」
と思うか、は接客サービスを含めた「満足度」によって決まることは間違いありません。そういう視点で言えば、

「マクドナルドはファーストフード業界のホテルオークラ」

と言い切っても、そう乱暴な話ではないのです。

ちなみに、冒頭のニッセンは12.3ポイント。通販分野で1位の22.5のセシールには負けますが、千趣会(13.3)とほぼ同点の3位という結果でした。

外食分野および他の代表企業の接客満足度

外食産業
他の主要企業
順位 企業名 満足度 企業名 満足度
1位 マクドナルド 23.7 帝国ホテル 33.5
2位 ミスタードーナッツ 16.2 ホテルオークラ 27.8
3位 モスバーガー 15.6 ホテルニューオータニ 22.5
4位 ケンタッキーFC 11.2 セブンイレブン 10.7
5位 デニーズ 7.5 ローソン 6.8
6位 ロイヤルホスト 7.4 大丸 16.5
7位 すかいらーく 3.4 東急ハンズ 31.5
8位 小僧寿し 3.2 マツモトキヨシ 8.9
9位 CASA -1.8 ニッセン 12.3
東京ディズニーランド 43.2

さて、その外食産業の業種分類で、下位を分け合っているのがファミリーレストランです。最も接客満足度が高いデニーズですら7.5ポイントしかありません。

これは、専門店分野でのマトツモトキヨシ、コンビニのローソン程度の水準です。

ファミリーレストランはセルフサービスではありません。ちゃんとしたウェイター、ウェイトレスがいます。でも、接客サービスの満足度はマクドナルドの1/3以下、マツキヨやローソンのようなセルフ店と同点です。これは一体どういうことなのでしょうか。冒頭でお話した「期待価値」の話がそのまま当てはまりそうです。

ファミリーがいないから「ファミレス(Family-less)」?

1970年にファミリーレストランの草分け的存在「すかいらーく」が、ことぶき食品という小規模スーパーマーケットの一部門として国立に1号店をオープン。1973年のオイルショック時代から脚光を浴び、ニューファミリーという「家族みんなで楽しむ」新しい価値観を持った層を中心に急成長。いまや、年間約3,000億円の規模を誇る大産業です。

が、ここに来て成長が止まっています。

総市場規模29兆円と言われる他の外食産業の競合、中食と呼ばれるできあい料理(専門用語で、HMR、ホームミール・リプレイスメント)や価格、O-157などの問題点もあるのですが、今回は接客という視点に光を当ててみることにします。

何故なら、最近のファミレスは「ファミリー」レストランになっていないからです。
そして、その接客の質や方向も顧客の変化に合わせて大きく変化してきたからです。
具体的にいえば、客層がファミリーから若者に大きくシフトしてきているのです。

しかも、その目的が長時間滞在型の喫茶店的利用です。
都心か郊外かの立地によって客層は大きく変わりますが、学生を中心とした客が増加してきているのが、読者諸兄も実感されると思います。
現在のファミレスでは10代後半から20代前半の利用客は推定で約30%。
一見低いように見えますが、マクドナルドを筆頭とするファーストフードでも50%程度です。実は、ファミレスはかなり客層が低年齢化しています。

(もう一方の雄は主婦ですが、共通点が多いので、今回はとりあえず若い人達を中心に話を進めます)

彼らの行動は

食事をしてちょっと談笑し、退店する

という目的型ではなく、

談笑し、勉強し、(仕事の打合せをし)、お腹が空いたから食事を注文する

という滞在型になっています。
こうなると、ファーストフード店の一部時間帯、つまり、下校時などと競合する位置づけになります。実際、

ファーストフード店より、
●席がゆったりしている
●長く滞在しても文句を言われない
●夜中でも営業している

といった理由でマクドナルドに行かなくなったという声まで届いてきています。

顧客の変化による接客サービスの変質が起きている

すると、何が起こるか?
接客サービスの変質です。

●長期滞在型のため、注文から注文の間が長い。必然的に従業員が客席に気を配る必要がなくなる。

つまり、客から見ると呼んでも気がつかないという事態になります。

●注文から注文の間が長い。従って、従業員が一定時間内にこなす接客回数が少ないのが当たり前になる。

客が頻繁に注文をしようとすると、従業員は「お買上ありがとうございます」の笑顔どころか、あからさまに嫌な顔をするようになります。「仕事を増やすなよ」という不満顔です。

●セルフ・サービスに慣れている客が相手なので、従業員の本来の業務を客に肩代わりさせる。

例えば、料理を持って来る時、利用客にテーブルの上の食器を片づけさせる、注文の確認をしなくなる等の例が観察されます。

結局、現在のファミレスは接客が多少悪くても、それがセルフに慣れた「滞在型」客の来店動機になっていないので、売上に悪影響を直接与えません。いや、ファミレスは郊外での展開が飽和状態になり、都市にその活路を見いだした結果、「滞在型」の客にターゲットをシフトしたからこそ、短期的に売上増を維持してきた側面さえあります。

しかしそれが結果的にマクドナルドを初めとしたセルフ店との競合を生み、本来の「レストランとしての」客離れが進む。悪循環が起こっていそうです。

観察も立派な調査

おもしろそうなので、簡単な調査をしてみることにしました。

上記3点のうち、「呼んでも来ない」回数と「客に働かせる」回数をテーマに観察調査を実施するのです。

2番目の「嫌な顔をする」のは、主観的判断による評価になってしまいます。今回の調査は調査員が行うもので、客が感じる「主観」とは質が違いますから、調査対象から外すことにします。

さて、調査項目を決めるには2通りのやり方があります。

今回のように、背景を整理し、その流れの中で調査項目を決めるやり方と、事前に現場を見て、接客という観点から「こういう点が問題になりそうだ」と調査項目の候補を拾ってくるやり方です。

今回の方法は、今まで読んできたように、仮説をしっかりと立てて調査項目を決めています。
調査の実施の話をするまでに200行も色々な話にスペースを費やしたのは、仮説や背景を重視したためです。

もうひとつのやり方は、例えば「呼んでもなかなか従業員が来ない気がする。それは、お客さんにとって不満なはずだ。だから、これを調査項目にしよう」と、調査項目の候補をその背景は無視して、現実面だけからリストアップする方法です。

どちらの方法が「良い悪い」というのではありません。
それぞれ得手不得手があります。

例えば「ファミレスは構造的にターゲットが変化している。これは、ファミレスの行くべき方向として本当に良いのだろうか」といった、戦略的視点(大局的視点と言い換えても良い)の場合は、前者の調査項目の決め方が有効です。

しかし、そんな大がかりな発想ではなく、単に「接客の満足度が低いから改善しよう」という短期的(現場的と言い換えても良い)な対応の方策を考えたり、現状把握をするためには後者の方法が最適です。
ちなみに実際のプロジェクトでは、戦略的視点の場合でも対処療法の視点からの質問も含めることが一般的です。

今回、前者の方法をとったのは、「接客が悪いから改善しよう」という対処療法的な発想では、ファミレスの問題は解決しないだろうと考えたからです。何と言っても、お客さんの質自体が変わってしまったから故の接客の変質なのですから。「臭い匂いは元から断つ」アプローチでなければ、いたちごっこで終わってしまう可能性が高いのです。

とはいうものの、今回の調査項目だけで言えば、たった2つの調査項目なので大きな違いはありません。今回はメールマガジン執筆のために簡略化した調査をモデルとして行いましたので、ご容赦下さい。

ちょっとかわいそうな対象店選び

調査店は私のオフィスの近場にしました。本格的なサンプリング(バラツキのないように対象店を例えば郊外型と都市型に分散すること)は割愛しました。考え方や調査の方法は同じですから、皆さんの参考にはなると思います。

コントロール(評価の比較基準店)として選んだ鳥良は鳥肉料理店ですが、店員のほとんどが学生のアルバイトなのにも関わらず、接客マニュアルが実にしっかりしており、心地好いサービスに定評がある店です(それでも、客に出すべき手羽料理をこっそりつまみ食いしたりと、現代のアルバイト事情はそれなりに反映しています)。

一方のジローは今やおしゃれな街の代名詞ともなってしまった、東京恵比寿駅前にあるカジュアル・イタリアンレストランです。何ということのない普通の店ですが、客単価が1,200~1,300円程度で、客席がかなり広く、都心型ファミレスに近い店という観点で選びました。

余談ですが、私の年代にとってジローは思い入れの強い店です。というのは、日本で初めて私達学生でもちょっと背伸びをすれば、ピザというおしゃれな食べ物が食べられる店だったからです。いわゆる「あこがれ」の店でした。

各店舗、5回づつ実験を繰り返します。データは30個集まります。統計的に完全に信頼できる数ではありませんが、傾向だけなら掴めます。
例えば広告の出来上がり評価を簡単に1日程度で実行する時などは、30サンプルを目安に調査を行います。ただし、当然のことながらクロス分割はできません。つまり、30サンプルを男女別に見たり、年齢別に見ることはできないということです。

逆に言えば、雑誌や新聞で30サンプル以下のデータを分析している事例を見たら、その結果は絶対に信用してはいけないことを意味します。

 調査対象店(ファミレス)
●渋谷デニーズ
●世田谷ロイヤルホスト
●幡の台すかいらーく
●幡の台ジョナサン
●八王子CASA
●20号線ガスト
 調査対象店(コントロール)
●原宿鳥良
●恵比寿ジロー

調査の時間帯は夜10時から12時です。この時間が最もファミレス側にとって隙が出るからです。ちょっと意地悪な視点で選定しました。確信犯です。

手を上げたまま30秒間の条件

調査方法は以下の2点です。

何回呼べば従業員(ウェイター・ウェイトレス)がテーブルに来るか
●「すみませ~ん」と普段の声の大きさで呼びかけます。
●手を上げ、視覚的にも注意を促します。
●ただし、近くに従業員がいるかどうかは気にしません。店によっては客席数に対する従業員数が少なく、自分のテーブルの近くまで来るのを待たなければ、注文ができないので、同伴者とおちおち話もできないことがあります。でも、このこと自体がサービス失格ですので、従業員とテーブルの距離に関係なく呼びかけ続けます。
●そして、30秒間に普通の声量で1回呼び掛けをします。手はあげたまま。

参考までにいえば、人間は心理学的に3回以上同じことを繰り返すと嫌になります。従って、3回以内に従業員が客のテーブルに来なければ失格です。

【注】心理学的に言えば、3回で嫌になるのではなく「学習する」のですが

料理を運んできたときに、何秒したらテーブルの食器を従業員が横にどけて、新しい料理を置くか
●テーブルにはすでに食器を置いたままにします。
●従業員が新しい料理を運んできても、じっと黙ったまま身動きをしないようにします。何秒間で彼らがテーブルの食器をどける仕種を開始するかを、テーブルの下に隠したストップウォッチで計ります。
●結果の集計は秒数ではなく、2秒間以上横に突っ立ったままの状態を「客に手伝わせようとした」と見なします。

ちなみに、本来は1秒以内にその仕種を始めなければなりません。心理学的にいえば、人間は0.2秒で状況を把握し、次の0.2秒ですべきことを認識します。つまり、0.4秒以内に「あっ、この人は食器をどけるつもりがあるんだ」と客に感じさせなければならないのです。
2秒間はファミレスにとって甘い判定基準です。

すごい結果になってしまった

実験調査といっても、勝負は目に見えています。
週刊ダイヤモンドですでに結果が出ているからです。
ここでは、「どれくらい、どのようにひどいのか」を数字で見てみようという趣旨ですから、悪しからず。

テーブルに来るまでに呼んだ回数

項目 平均
最少
最多
最も頻度が
高い回数
ファミレス全平均 9.1回 4回 25回 8回
原宿・鳥良 1.4回 1回 2回 1回
恵比寿・ジロー 1.6回 1回 3回 1回

物凄いです。
こんなにも差がでてしまいました。
ファミレスでは実に10回近くも呼ばないと従業員が来てくれない。

前述のとおり、サンプル(選定店)に偏りがあり、結果を若干疑問視をしていたのですが、そんなものは一片に吹き飛んでしまう程の数字です。心理学的な許容範囲の3回など、何処吹く風という様相を示しています(専門的に言えば、統計的な有為差はギリギリありません)。

実際の場面では、「お客さんが」わざわざ従業員の動きを見て、こちらを向いたな、こちらに来たな、あのテーブルの注文が終わったなという観察(努力)をしますから、こんなに回数を呼ばなくても良いわけです。
言い方を変えれば、客が従業員の業務の肩代わりをしてあげている訳です。
従って、この結果は「客が客として扱われようとした時にこうなる」ということをもう一度思い出してください。

実は、異常値ということで計算には入れませんでしたが、ファミレスの最多記録は34回なのです。延々20回を越えたところで、

「よし、どこまで記録を伸ばすか、おもしろそうだからやってみよう」

と協力者と楽しんでいたところ、他の席の客が見かねたのか、不思議がったのか

「あちらの席で呼んでいるようですよ」

とウェイトレスに言ってくれてしまったのです。
そうでなければどこまで行くのか、未だに興味があります。何せ、この時はすぐ隣をウェイトレスが3回も通っていったにもかかわらず、無視されたのですから、100回の記録も夢ではなかったでしょう。

コントロールの2店は実に優秀でした。鳥良はさすがにサービスマニュアルが行き届いており、文句のない状態でした。また、ジローも健闘しました。特に、ここは店長らしき人物がしっかりしており、他の従業員が気がつかないと見てとるや、自分がサッと飛んでくるのです。ちゃんと客席に目を配っているのが大変良く分かる接客です。

「お客さん、皿をどけてください」

食器を客に片づけさせようとした比率

項目 平均
最も多い

最も
少ない店
ファミレス全平均 62.1% 80.0% 20.0%
原宿・鳥良 0.0% 0.0% 0.0%
恵比寿・ジロー 0.0% 0.0% 0.0%

ファミレスは実に5回に3回は客に食器を片づけさせる結果となりました。
他の店は「もちろん」ゼロです。
ただ、これは、上の「呼んでも来ない回数」とは、構造が異なります。
従業員によるのです。

つまり、客に食器を片づけさせる従業員は常にそうしているのです。
各店日にちを変えて5回づつ実験を繰り返したのですが、そのうち、4回も片づけさせた店はすべて同じ従業員でした。観察していると、彼はどの客にもそうしています。

唯一、自分で食器を片づけたのは、胸元が大きく開いたキャミソールドレスの女子大生3人組の時だけでした。
従って、すべてのファミレスでこういう傾向があるというより、こういったズボラな従業員が何人いるかで、個店の接客評価が変わってしまうということです。

余談があります。
ある店で、従業員が料理を持ったまま突っ立ったっているのを、わざと放ったらかしにしていたのですが、彼はずっと微動だにしません。30秒ほどたった後、会話が始まりました。ちなみに、30秒はかなり長い時間です。

 「何を突っ立ってるんですか?」
相手「お客さん、皿をどけて下さい」
 「何故、客が手伝わなきゃならないんですか」
相手「手がふさがっているからできません。皿をどけて下さい」
 「それはあなたの仕事でしょう」
相手「…」

なんと、彼は一言も言わず、「隣」のテーブルに料理を置いたまま、そそくさと帰っていきました。
協力者の女性とあっけにとられて、しばし無言状態が続きましたが、あきれたのを通り越して2人で腹を抱えて大笑いでした。

おまけ:注文間違い

最初は予定に入っていなかったのですが、興味深いので公表します。
実は、注文間違いという現象が頻繁に起こっていました。

総注文点数に対する間違いの比率

項目 平均
ファミレス全平均 27.9%
原宿・鳥良 0.0%
恵比寿・ジロー 0.0%

全体の約30%の注文ミスはかなり高率です。この分だと、昼などの繁忙時ではもっと高くなるでしょう。

実は、恵比寿の「神戸ランプ亭」というダイエー系列の牛丼チェーンで、昼食時に注文ミスを数えたことがあります。店長や厨房がある1階ではなく、従業員しかいない2階では従来から「接客がいい加減だ」と感じていたので、それを数値化して感覚を客観化したいと思ったからです。

結局、たった30人の客に対して、注文ミスがなんと22回もありました。比率にすると71%という高率です。
現在この店は、数十メートル先の吉野屋に客を取られ、2階の営業もなくなり、細々と営業しています。

顧客満足を正面から捉えていますか?

「学生時代に空間プロデュース等の仕事をしたことがあります」

という方に採用面接することが、以前在籍していた会社で良くありました。

要するに、カフェバーやレストランの開業企画に携わったというわけです。
私の質問は

「素晴らしいですね。何が一番大事だと思いますか?」

ですが、99%がこう答えます。

「…インテリア、話題性、立地です」

…誰一人採用になりませんでした。

惑星に不時着した宇宙船、アメリカの監獄での食事、マイケルジャクソンやマドンナが訪れたディスコ…
内装や話題性で客を呼べるのは3回までです。
それ以上、足を運んでもらうために必要なのは

「料理、値段、従業員、立地」

です。が、そう答えた人はゼロでした。
そして、リピーターのいない店はまず1年もちません。

カスタマー・サティスファクション…英語でいうとかっこいいですが、耳の響きだけを大切にして、何の対策も実行していないのはファミレスだけではありません。デパート、メガストア等の流通業だけでなく、食品や時計等の製造業でも同じことです。

もしかしたら、この魔法の言葉は企画書に載せるだけで、「企業が」満足してしまう、「『コンサルタントや広告代理店にとっての』カスタマー」が得るサティスファクションなのかも知れません。

別名自己満足とも言います。

さて、次はどの産業の観察調査をしようかしら。
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