readers' voice

励ましや、おしかりの言葉、ありがとうございます。

他の読者の方々の中にも、同じご意見を持った方がいらっしゃるかも知れません。自分の考えをまとめるための参考になる場合もあります。だから、「読者の声」は大事にしたいと考えています。
原則として、原文を掲載しています。新しい声から順番にご紹介しています。

それぞれの方々へのご意見もお待ちしています。
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この色は皆さんの声 (お返事付) この色は皆さんへのご意見です
この色は皆さんの声 (お返事なし)

「私はこう見る」全体について 【その1】

 <さやかさん> 【自分の好きなものを作る」危険性】
        「?????」98.11.8

お返事の中で、「自分の好きなものを作る」危険性について教えていただきましたが、実は正にその通りの危険を犯し、爆進中といったところです。どうやら、何年も前からそうやって企画を立てては社内の稟議を通過せずにいるようです。かといって、社内の判断が優れているわけでもないのです。

理由を書くと、なんだか内部暴露(というより愚痴なんですが)のようですが、題材にあった日立さんも同じようなことが言えると思います。

先日、新しい上司として本社でもやり手といわれる人が赴任してきました。私の部署ではバックボーンとしてある程度の方向を決めた生活環境の研究のようなこともしています。「今年は高齢者対応などの3つのテーマをたてて、情報収集や人口動態からの予測などを行っています」と新しい上司に説明したところ、「そのテーマはうちの事業のどれに対応しているんですか?」と聞かれました。

確かに社内で多くの予算を取ってくることが、うちの会社では「仕事ができる」ということです(営業は別かもしれませんが)。
それにはそういう考えが一番合理的です。ノウハウや技術がなければどんなにいいアイデアも製品にできません。
でも、そういう考えに何十年も晒された人達が上にたくさんいる、というのはちょっと薄ら寒い話です。

日立さんも会社が大きい分、こういう頭の固さが染みついているのでは、といらないことを考えてしまいました。自分たちがつくる製品への愛情とか誇りはもちろん品質とともに持っていると思いますけれど。それでは今の世の中売れないと。耳の痛い話です。

本当は、商品企画では「自分の好きなもの」ではいけないと思うけれど、数値の積み重ねで見えてくる動きを予測することは大量生産を前提とした考え方に過ぎないのかも? といったことを教えてもらえたら、と思っていたのですが、長くなりましたので、終わりにします。


【お返事】

>ところです。どうやら、何年も前からそうやって企画を立てては
>社内の稟議を通過せずにいるようです。かといって、社内の判断が

やはりそうでしたか。
歴史がそれなりにあって、規模の大きい企業がそれを「革新的」「目先を変えて」実行すると、そうなるケースが多いのですが、香林さんの会社もそのタイプなのでしょうか。
また、その傾向は家電・オーディオ機器関係に多いのも実際の所なのですが。

>テーマはうちの事業のどれに対応しているんですか?」と聞かれ

うーん。
技術系研究開発の場合は、基礎研究と応用研究の2つの分野があって、応用研究は商品に直接関わるものですが、基礎研究は直接関わる事業は想定しないで行う、といった棲み分けが一般的ですが、マーケティング等の人文科学系では、まだその意識が定着していないのです。

私も、最初はかなり大きな企業にいたのですが、そういう時は上層部が適当に納得するような理屈を付けて稟議書を回してしまうテクニックを身につけましたが、本来の姿ではないですよね。

>確かに社内で多くの予算を取ってくることが、うちの会社では
>「仕事ができる」ということです(営業は別かもしれませんが)。

納得です。予算と人員。これが多ければ多いほど「できるヤツ」になってしまう。
確かに、予算が多ければできることも増えるし、人員が増えれば仕事が楽になるか、できる仕事の量あるいは質が高くなるので、わからない訳ではありません。でもねその目的をきちんと把握しないまま、図体だけが大きくなっても、役所のような力の原理になってしまいます。確かに、それが大企業病の症状の一種なのですが。

>それにはそういう考えが一番合理的です。ノウハウや技術が
>なければどんなにいいアイデアも製品にできません。

いえいえ。逆にどんなに技術が高くても、アイデアがなければ良い商品は生まれません。
シャープの液晶ビューカムが良い例ではありませんか。あの商品は、画期的な新技術を使っているわけでも何でもないのですから。ただ、アイデアが画期的でしたよね。
アイデア (コンセプト) と技術は両輪と考えるべきなのです。どちらか一方がゼロなら、結果 (売上) もゼロです。

>でも、そういう考えに何十年も晒された人達が上にたくさんいる、
>というのはちょっと薄ら寒い話です。

自分が会社を変えるか、その中で好きなことをごまかしながらやるか、あるいは外に飛び出すか。私は、3番目を選んだだけです (笑)

>製品への愛情とか誇りはもちろん品質とともに持っていると思い
>ますけれど。それでは今の世の中売れないと。耳の痛い話です。

正直言うと、ビジネスですから、利益がなければなりません。とはいうものの、現状に媚びているだけでも、利益は生まれません。
コンサルタントというより、社会人の先輩として言えば、「2番手」を狙うのが最も現実的な、そして、最適な方法だと思っています。生活者も、「1番手」の商品は手を付けない場合が多いのです。「2歩も3歩も先を行く商品」ではダメです。「半歩先」の商品が最も分かりやすくて、受容されます。

つまり、「1番手」は後々のために取っておく。そして、時期 (チャンス) が来たら、一気にそれで押す。逆に考えれば、「1番手」の存在が分かっていれば、「2番手」を作ることなど簡単ではありませんか。それは、(見通しとして) 余裕やキャパシティのあるビジネス・パースンだけに許されるやり方ですので、悠長に構えていられる、という利点もあります。

>数値の積み重ねで見えてくる動きを予測することは大量生産を前提と
>した考え方に過ぎないのかも? といったことを教えてもらえたら、

短い文章なので、主旨がはっきりしませんが、ちょっとだけコメントします。
数値の積み重ねだけではきちんとした市場の動きは把握できません。
平均発想に陥りやすい、ということなのです。

例えばガス・ステーションの選択基準は「近いところ」が50%もいます。だから、平均発想では、この50%に注目し、なんとか店の数を増やそうとします。でも、GS は行政指導が強いので、簡単に数を増やすわけには行きません。すると、「行政で縛られているからダメなんだ」と下位は思いがちです。

でも、逆に言えば、後の50%があるではありませんか。
これを私は「クラスタ発想」と呼んでいます。
大きな市場に突っ込んでいくのは結構。でも競争相手がひしめているのでは、取り分が少なくなります。でも、クラスタ発想なら、競合が少ない分取り分が多くなります。
数値「だけ」での発想は、この平均発想を促進します。


 <島田さん> 【そんなに私たちはモノを買わなくてはいけない?】
       「?????」98.10.19

I. 不況について

現在、不況が長引いている原因として、テレビや新聞では「経済の先行きが不透明で、日本の消費者はお金を持っているのに、使わない」ことを、その一つとしてあげ、外国も「景気回復のためにも内需拡大しろ」といってきていることをよく報道しています。

そこでいつも素朴な疑問がわきます。
「そんなに私たちはモノを買わなくてはいけないのでしょうか?」

確かに、世界の経済活動は“お互い様”の関係で成り立っています。どこかの国だけが自国の経済を発展させ、お金持ちになったとしてもだめであることを経済学の本で知りました。なぜなら、そのお金をまた市場に返して(つまり、モノを買ったりお金を融通したりして)相手国の経済を発展させないと相手国に購買力がつかず、自国のモノを買ってもらえないからで、長い目で見たら、お金を持っていても使わないのはよくないと書いてありました。

しかし、今の日本には十分モノがあふれているし、これ以上モノを買う理由がありません。僕の世代は、マーケティングの世界では団塊ジュニアと呼ばれていますが、生まれたころから世の中が豊かだったので、そんなにモノへの執着心はないような気がします(もちろん例外はあると思いますが)。企業の広告や販売戦略にもそんなに踊らないのでは?ただし、個人がそれぞれの基準を持っていてそれに合えば買うでしょう。

もちろん、日本に生きているのは団塊ジュニアだけではありませんが、数が多いので消費行動への影響は大きいと思います。今の日本経済は構造転換が必要で、消費者のほしいものを提供していないだけだという意見もあります。しかし、もともと買うことに対して意欲的でない、所有することに対して価値を見出していない人々が増えたとしたら…。

うまく言えているでしょうか。僕の聞きたいことは「そんなにモノを買って景気をよくし、経済を発展させなければならないのでしょうか?」ということです(新興宗教にはまっているわけではないです)。バブルのときは景気はよかったが、地上げやが横行したり、普通の人が株で儲けて、一生懸命働くのがバカバカしくなったり、、そんなに楽しいことばかりではなかったように思い出します。

今の日本の経済は報道機関が抱えている問題と同じように見えます。毎日のニュースや出来事を取材して伝えるために生まれた報道機関が、そんなに毎日たくさんのニュースが世の中にあるわけではなく、自らの存続のために記事をでっち上げてしまうように(アルバイトをして思い知った)、企業もニーズを半ば強引につくっているように見えます。はじめに売ることありきのようです。

僕はまだ学生なので(来年ベンチャー企業といわれているところに就職します)、企業社会で厳しさ、生き残るために必死になることも知らないので、奇麗事を言っているかも知れませんが、ご意見をお聞かせ下さい。

II. 企業監査について

企業の会計に関しての不祥事(粉飾決算や簿外債務)がよく伝えられますが、公認会計士や監査役がチェックしているはずなのにどうして起こるのでしょうか。コンサルタントだと企業の会計や財務にも詳しいと思って質問します。

最後に
◆メールマガジンへの要望
取り上げてほしいテーマ

・コンサルタントから見た日本のベンチャー事情
・農業の株式会社化にともなうアグリビジネス展望

二つとも漠然としているかもしれませんが、テーマを絞ってもかまいません。よかったら取り上げて下さい。


【お返事】

>「そんなに私たちはモノを買わなくてはいけないのでしょうか?」

結論から言いますと、まったくその必要はありません。
消費者は買いたいときに買いたいモノを買えば良いだけです。
それ以上のことをする必要は金輪際ないのです。

確かに、マクロ経済学の立場から言えば、消費者が財布の紐を締めて、モノを買わなくなると、経済活動が停滞し、消費者自身も困ってしまうことになります。それは「経済にとって」良くないことに過ぎません。

なぜ
  >で、長い目で見たら、お金を持っていても使わないのはよくない
というのでしょうか。

簡単です。
企業が楽をして何の努力せずに潤うからです。
別な言い方をします (これを言っているのが企業ではなく、政府、マスコミ、学者だからです)。
こういう言い方は、「自分のことしか考えていない人が言う」からです。

経済にとって「良くない」ことは、個人にとって「良くない」こととは限りません。消費者がいちいち「だから、自分達は頑張ってお金を使わなければいけない」なんて、資本主義でも、自由経済でもありません。

じゃあ、どうするか。
企業が「消費者が買いたい」と思うモノを作れば良いだけなのです。逆に言えば、今の企業は、そういう魅力的な商品を作っていないだけです。

ご参考までに、関連バックナンバーがありますのでこちらをご覧下さい。

http://www.systrat.co.jp/gimmie/articles/goods980601.html

自分は努力もしないで、「お前がこうしなけりゃいけない」なんて、人間同士ならケンカになります。

別な例を出しましょう。IQ 200というとんでもない人物がいます。ただ、彼は、いつも不潔で、だれかれ構わず喧嘩をふっかけ、しかも冷たい男です。独身です。こんな男が「なぜ、オレは女にもてないのだ。オレのような素晴らしい頭を持った男の子孫が生まれないのは日本の損失だ。だから、日本の女はオレと生殖活動を真剣に考えるべきだ」なんていった日には、「やだぁ、気持ち悪い〜。なぁに、この人」と言われるだけですよね。冷静に考えれば確かに彼の言うとおり「日本の損失」かも知れません。でも、そんなことは知ったこっちゃない、というのが人間の本音です。それで良いのです。

「こうあって欲しい」のなら、それに見合った努力をすべきです。IQ 200の男性は女性にもてたいなら、それなりの努力をすべきです。逆に、努力をしたくないなら、それに見合った結果しか得られないことを自覚すべきです。

この例と全く同じです。
  >で、長い目で見たら、お金を持っていても使わないのはよくない
のは、IQ200 の男性と同じ事を言っているに過ぎません。

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>モノへの執着心はないような気がします(もちろん例外はあると思います

1つだけ、島田さんのおっしゃっていることで私と意見が違う部分があります。
確かに、島田さんの世代は生まれた時から豊かだったので「モノ」に対する執着心はありません。「所有する」という意識も薄いです。

でも、商品とはそれだけでしょうか?
エステは商品です。サービスとも言いますが、少なくとも対価を支払って「得るモノ」がある、という意味では有形無形の違いしかありません。
携帯電話の通話料は目に見えないモノです。でも、対価を支払います。
自動車を買って所有するだけで満足はしません。でも、レンタカーは使います。
つまり、「所有する」メリットはなくても「使用する」メリットはありますよね。

モノが溢れてくると、目に見えるモノの欲求は減りますが、欲求そのものが減少しない限り、それに代わる商品が出現します。それで良いのです。無形のモノは今まで無料だったものも多くあります。でも、それをきちんと商品化すればお金は動きますし、企業活動もできるのです。「じゃまーる」なんて、その典型です。FromA の1投稿コーナーで、それだけでは料金を取れなかったものを、「じゃまーる」という独立の雑誌にしたら商売になってしまう。消費者は目に見えるものは買わなくなりましたが、「寂しさを紛らわすもの」「仲間を見つけるもの」にはお金を出しているではないですか。

また、目に見えるものでも魅力的なものは存在します。
MD は元気です。ソニーの最高利益の理由の一つが MD の急激な普及です。
デジカメも元気です。
良い商品を作れば、必ず売れます。有形無形は関係ありません。人間に欲求がある限り。

お答えになっているでしょうか?
疑問等ありましたら、お気軽にご連絡下さい。

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>II. 企業監査について

申し訳ありません。
この点については私は役不足です。
コンサルタントといっても、この点は経営コンサルタントや財務コンサルタントの領域です。マーケティング・コンサルタントは企業の外の活動 (対消費者、流通、メディア)、経営コンサルタントや財務コンサルタントは企業の中の活動 (人事、財務、組織) とお考え下さい。

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>・コンサルタントから見た日本のベンチャー事情
>・農業の株式会社化にともなうアグリビジネス展望

了解いたしました。お時間を頂くことになりますが、お約束します。
ただ、これら2つは、他業種より時間がかかります。ご了承下さい。

というのは、前者の場合、ベンチャーという定義がまだまだあいまいであることが主な理由です。一応の定義はあります。しかし、様々なところで様々な定義が混在しているので、事情が見えにくいところがあります。それを調べるだけでも他の業種より時間がかかってしまうのです。

また、後者は、私自身があまり詳しくない、というのが最大の理由です。

 <Tashiroさん> 【なぜ「かなりおもしろい」の欄なんですか?】
       かなりおもしろい(「私はこう見る」市場導入戦略)98.10.15

面白いですが、(毎回のアンケート項目は)なぜ「とてもおもしろい」ではなく「かなりおもしろい」の欄なんですか?


【お返事】

鋭いご質問です。
調査の言葉遣い (ワーディングと呼んでいます) は微妙に回答数値に影響を与えます。

今までの研究で「かなり」「やや」「どちらともいえない」「やや」「かなり」という言葉遣いが、最も均等に距離が離れていることが判明しているからなのです。

「とてもおもしろい」「ややおもしろい」の組み合わせは認識の幅が広すぎます。
「とてもおもしろい」「おもしろい」の組み合わせでは、上よりも狭くなりますが、次に続く「どちらともいえない」との距離よりも狭いのです。

図式化すると、以下のようになります。

「とても」 「やや」「どちらともいえない」
+------------------+-------+

「とても」 「おもしろい」「どちらともいえない」
+--------------+-------+

「かなり」 「やや」「どちらともいえない」
+-----------+-----------+

関連記事をホームページに掲載していますので、こちらも合わせてご覧下さい。

http://www.systrat.co.jp/theory/reading/QNTY01wording.html

 <さやかさん> 【「偉大な平凡人」に勇気づけられました】
        98.9.26

はじめまして。さやかと申します。とても興味深くマガジンを拝見しました。私自身、マーケティング部門で働いておりますので、思わずうなずいてしまう箇所がたくさんありました。(その一方で入社2年目でこういう感覚が染み着いてしまったことに苦笑していますが。)

メールをお送りしようと思った理由は「メールマガジンの楽しみ方」のなかで「偉大な平凡人」との表現に(勝手に)励まされたからです。

私はマーケティングの仕事をするようになって実質1年半になります。少ないなりにいろんな人の話を聞いたり、本を読んで仕事に臨む態度として「透明な自分であること」を心がけるようにしています。自分が面白いと思うことでは駄目だというのが、一生懸命考えた結論です。

ところが会社では「自分がほしいと思うものを企画しろ」と言われ、社外の研究会で上記のようなことを発言したら「なに考えてるんだ、お前」みたいな顔をされてしまい社会人の最初からくじけそうになっていました。

本当はまだ勘違いをしている部分もあって、回りの人が言っていることが本質であるところもあるとは思うのですが、自分で見つけた方向に少し自信がもてました。

ありがとうございます。

これからも楽しみにしております。それでは


【お返事】

大丈夫です。さやかさんは間違っていません。
また、会社の方がおっしゃっていることも間違っていません。
ただ、社外の研究会の方々は間違っています。

最も重要なのは「自分を如何に柔軟にするか」です。正に、さやかさんのおっしゃる「透明な自分であること」です。
社外の研究会の方々は「こうでなければならない」という見方に固まっているようです。これが最も危険な状態です。

「自分がほしいと思うものを企画しろ」は、1つのやり方です。
はっきり言ってしまえば、企画やマーケティングの経験の少ない人でも、一定の水準の企画ができる「手っ取り早い方法」なのです。

さやかさんがどのような会社にお勤めなのかはわかりませんが、長期間じっくりと成長し、(企業内) マーケティングのプロとしてやっていくのであれば、良い方法とは言えませんが、「即戦力」として「売れる商品」を作るのであれば、それなりに有効です。
なんといっても、「自分が欲しいもの」ですから、細部にわたってこだわりが出るし、それが消費者の心を捉えるのです。手法として注目を浴びるのは当然です。

ただ、この方法には欠点があります。
基本的なマーケティングをそんなに勉強しなくても一定の成果が上げられるので、「自分の欲しいもの」の感覚が消費者とずれはじめると、歯止めが利かなくなる、という点です。そして、それは普通の方では意外に早く訪れます。つまり、ヒット商品の1つや2つは入社2-3年で作れるけれど、その後は感覚がずれまくっているので、何を考えても当たらない、という状況になります。
実際、プラスのチームデミをはじめ、様々な「自分の欲しいもの企画」でヒットを上げた企業がすべて途中で失速しているのです。

もっと言えば、デザイナーのような感性を主体とする業界がこの典型です。彼らは「自分が欲しいもの」でデザインを決めているわけではありませんが、「自分の世界」でデザインを表現します。結局、彼らは年を取るごとにテクニックで感性をカバーしますから、ある程度までの年齢までは良いデザインを作りますが、35才を過ぎたあたりから、名声や経営感覚がないとデザイナーとしてやっていけなくなってしまうのです。

ちなみに、私の場合、自分の感性が一般生活者とかなりズレまくっていたので、メーカー時代からそれをイヤというほど味わいました。例えば、自分の好きなパッケージデザインは、調査結果ではボロボロ、メタメタの評価なのです。何10ものブランドを開発しましたが、1つとして一致したことがありませんでした。しかも、女性向けブランドの時には、地の底に打ちのめされる程、感覚がずれているのがわかりました。

逆に、「自分の好きなのはこれ、でも、調査ではこれとこれが1番、2番だろうな」という予想は異常に得意になりました。広告開発でも、代理店のプロデューサーやディレクターと予想競争をやって負けたことがありませんでした。

喜んで良いのか、悲しむべきなのかはわかりませんが、少なくとも自分の進むべき道は人生の早いうちにはっきりしたのは幸運というべきなのでしょう。

さて、さやかさんの目指すところと会社が要求しているところに若干のギャップがありそうです。
でも、良いではないですか。さやかさんはさやかさんの方法でやっていけば。

さやかさんなら大丈夫だと思いますが、1つだけ、余計なことをつけ加えさせて頂ければ、「透明な自分であること」や「偉大なる平凡人」は、現状認識フェーズおよび確認ステップのみで有効な姿勢だということです。

マーケティングは簡単に言えば、現状認識フェーズ、計画立案フェーズそして計画実行フェーズがあります。そして、それぞれに確認ステップが含まれます。

そのすべてにおいて消費者と同じ感覚だと「消費者ニーズに迎合した」商品しか生まれません。「消費者ニーズをくみ取った商品開発」のためには、何らかの工夫が必要です。私はそれを「どんでん返し」と呼んでいます。結末が判っている映画はつまらないけど、ラストのどんでん返しが効いているものは印象に残ります。

マーケティング、特に商品開発はそのどんでん返しが極めて重要になります。そして、それは、「消費者と同じ感覚」では生まれません。ただ、そのどんでん返しの案を評価するには「透明な自分であること」や「偉大なる平凡人」が再び必要になってくるのです。

失礼ですが、さやかさん入社2年目にしては、かなりしっかりした方のようです。
どんどん色々なものを吸収して成長して下さい。そして、今の自分にもっと自信を持って頂ければ、と思います。

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>働いておりますので、思わずうなずいてしまう箇所が
>たくさんありました。(その一方で入社2年目でこういう
>感覚が染み着いてしまったことに苦笑していますが。)

さやかさんなら、中級者・上級者向けの他のページも楽しんで頂けるのではないでしょうか。
一度、こちらのページにも遊びに来て下さい。

http://www.systrat.co.jp/theory/theory.html

 <高柴さん> 【全文掲載のバックナンバーはどこで読めますか】
       98.9.28

<高柴さん> 「ホームページの他のコーナーに寄せて」98.9.26

早速、ホームページを拝見しました。
考え方の筋道が、いわゆる「腑に落ちる」という感じで、興味深く読ませて頂いております。

未だ全部は読み切れておりませんが、一つお尋ねがあります。
「私はこう見る」の記事に興味がありますが、バックナンバーでは全文を読む事ができないようです。
何か特別の手続きをしないと駄目なのでしょうか?
教えて頂ければと思います。

今後とも興味深い記事に期待しております。


【お返事】

大変申し訳ありません。

バックナンバーは以下の URL にアクセスして下さい。ここは、会員用なので全文が読めます。メールマガジンにも書いておいたのですが、わかりにくかったようです。次回の配信では記述位置を変更します。

http://www.systrat.co.jp/gimmie/gimmie.html

>早速、ホームページを拝見しました。
>考え方の筋道が、いわゆる「腑に落ちる」という感じで、
>興味深く読ませて頂いております。

ありがとうございます。
読みごたえがあるかと思いますが、ご質問等ありましたら、お気軽にご連絡下さい。
業務の関係上、また、忙しさによって、詳しくご説明できない場合もありますが、できるだけお応えしたいと思います。

それぞれの方々へのご意見もお待ちしています。

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