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身体計測機 - 1:皮膚感覚のススメ 98.10.1

自身の身体を測定機に仕立て上げる職種

イメージカット1たばこのブレンダーは1日300本余りを試喫するといいます。しかも、その微妙な味を測定するために、かなり健康的な生活をしています。例えば、規則正しく生活するのはもちろんですが、深酒や寝不足は一切しないというルールを徹底している、とのこと。

たばこの「味」は、機械では測定できないのだ、とか。

舌に直接触れるものなら、塩分や糖度などを測定する機器を利用すれば、ある程度の「味」というものがわかります。それでも、「うま味」を測定するものはアミノ酸を測定する以外に方法がありません。もちろん、総合的な「味」を判定する機械となると、まったく存在しないのが実状です。

それなのに「煙の味」です。
直接、舌に感じることができないものを相手にしているだけに、やっかいな代物です。飲料や食品以上に味の判定が難しいのが、たばこという世界なのです。
だから、ブレンダーは唯一の「測定機」と言えます。

私も若い時に、ある嗜好品メーカーの営業マンを1年ほど経験しました。
営業マンといえども、味の判定能力が必要です。自社商品の返品要請があれば、1口含んだだけで、製造年月日を前後1ケ月の誤差で判断できるまでに、自己訓練を積んだものです。もちろん、現在は製造年月日や賞味期限がパッケージに印刷されていますから、訓練等はいりません。でも、25年前の当時、そんなしゃれたことをするメーカーなど皆無でした。そんな時代だったのです。

転職先のメーカーではブランドマネジャー職でしたが、自分で味覚を判定できるという能力は大変便利でした。なぜなら、この会社は外資系だったので、海外工場の品質管理が日本ほど徹底しておらず、規格から外れる商品もよく見かけたからです。特に、水分含有量が規格を外れているかどうかは、水分測定機よりも断然に早く判定できましたし、主要なものなら、原材料の含有量や質までも自分の舌で判断できたのです。

口腔は人間の身体の中で最も敏感な部分の1つです。ですから、素人でもそれなりに訓練を積めば、比較的楽に測定機械の水準に達することができます。他の身体の部分ではそうはいきません。手で掴んだだけで水分測定機より早く、しかもコンマ・ゼロ%の精度で水分含有量がわかる職人芸などは、やはり何10年もの訓練と資質を持っていなければ、できる相談ではありません。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

自分でやってみよう

工場等の製造現場に限らず、自分の身体や感覚を客観的な尺度測定機にすると、便利なことが多いのは確かです。
いや、正直にいえば、マーケティングに携わる人間として、自分の感覚を測定機として仕立て上げるのは必須といってもいいでしょう。

何に使うのか?
まず上げられるのは調査の仮説づくりです。
次に戦略体系の策定の際に利用できます。
今回は、紙面の関係で、調査仮説の側面について主にお話しをいたします。

仮説の誤解

仮説に対する、良くある誤解は「問題解決型は事前の仮説が重要だが、発見型には仮説は不要」というものです。

データだけで構築したマーケティングは失敗する

いずれにしても、仮説なきマーケティング、いや、皮膚感覚なきマーケティングが成功する確率は極めて少ない、と言えます。

データはあくまでもデータです。
私のように大量のデータに長年接していると、データの持つ限界がはっきりと見えてきます。その最大のものは、「データは一見客観的に見えて、実は極めて設計者・分析者による主観的なものだ」、という動かし難い現実です。

皮膚感覚と論理の使い分け - シストラットの場合

「シストラット調査の10ケ条」第5条「データで積み上げたマーケティングは失敗する」は、まさに本稿で解説した事柄を差しています。

では、皮膚感覚と論理をどう使い分けるのか。
私の場合、コンセプトにしろ戦略にしろ、まず「落ちる」つまり、ピンとくるまで自分をイジメます。この段階では理論などの表層的な意識や尺度は利用しません。

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