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クープマンの目標値

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市場を見きわめるコツ

イメージカット「市場」の把握を誤ると、その後の戦略もすべて狂ってしまう。

その「市場」の環境は現在、複雑化しており、企業の手ではコントロール不能な要因がからみあっている。「市場」の守備範囲が広くなっているために、一経営者の勘や経験だけでは、市場を簡単に見きわめることができなくなっているのである。

また、メーカーの「思い込み」も、市場環境を正確に把握する妨げになっている。長年生活者の動向に目を光らせ、商品が売れる過程をつぶさに観察し続けたメーカーは、市場も正確に把握できているものと錯覚しがちである。しかし、実際には市場を見極める時点で、間違いを犯しているケースが多いのである。

企業が失敗しがちな点とは何か?
まず、自分の立場を正確に認識していない、つまり、自社が弱者なのか強者なのかを把握せずに失敗している例が多い。
さらに、市場が成長期にあるか、衰退期にあるかを把握していない企業も多い。成長期に応じた方法論、あるいは衰退期に適した戦略があるのに、それがわからず、やみくもに商品開発や過剰投資をしたあげく、失敗してしまうのである。
また、競合がはっきり見えていないケースもある。そのため的外れの戦略で多額の資金を失ってしまう。

では、市場を見極めるためには何に注目したらいいのだろうか?

一番の目安となるのがマーケットシェアである。ただ最近では、シェア至上主義の企業戦略に疑問が投げかけられている。市場そのものの規模が小さい場合、そのなかで圧倒的シェアを誇っても多額の利益は見込めないのである。

では、シェアを過少評価してもいいのか?

たしかに、「パーセンテージでは飯は食えない」のである。しかし逆に、「パーセンテージを無視したら水も飲めない」というのが私の持論である。
マーケットシェアは、市場を見るうえで非常に重要な指針だ。シェアは、企業のポジションを把握する基準であるうえに、未来の市場動向を反映している。言いかえれば、シェアに注目することによって、現在および将来にとるべき戦略が見えてくる。

では、具体的にシェアにどんな意味があるのかを、次に説明してみよう。

シェアのサインを見逃すな−クープマンの目標値

クープマンは、シェアが発するサインに注目し、シェアと市場推移の関連性を解析した。そしてシェアを見きわめるポイントを6つに分類した(ここでは、主な5つを紹介している)。

図表1

(1)73.9%……独占的市場シェア

要するに独占シェアである。このパーセンテージを取れば、短期的に見ればトップが引っ繰り返る可能性はほとんどあり得ない。トップ2ブランド(社)合わせて73.9%以上を占めている場合を「二大寡占」、3ブランド(社)の場合を「三大寡占」と呼ぶ。独占禁止法の問題もあり、1社や1ブランドで独占シェアを占めている企業は少ないが、

日本たばこ産業 77.6% 紙巻きたばこ市場
富士写真フィルム 67.4% カラーフィルム市場
ソニー 68.3% 家庭用ゲーム機市場
サントリー 62.3% ウィスキー市場

などが実例として挙げられる。

(2)41.7%……相対的安定シェア

市場で首位のブランド、ないし企業41.7%のシェアを占めている場合、トップの地位は安定しており、不測の事態に見舞われない限り、逆転されることはない。この数字はシェア獲得の最終日標として掲げられることが多い。トップにこの数字を握られると、下位ブランドや企業はシェアを上げにくくなる。またこのような市場では、特別に有利な条件がない限り、新規参入しても成功する確率はきわめて少ない。ちなみに私は41.7%以上を占めるブランドや企業を「ガリバー」と呼んでいる。このシェアを獲得している企業は

ソニー 45.0% ビデオカメラ市場
エプソン 47.0% インクジェットプリンタ市場
日清食品 42.6% 即席めん市場
コカコーラ 43.2% 缶コーヒー市場
ライオン 45.2% 歯磨き市場
ヤマト運輸 46.3% 宅配便市場

などが挙げられる。

図表2

(3)26.1%……市場的影響シェア

この程度の数字で1位を占めているブランドや企業は多い。しかし、いつ下位に逆転されるか分からない不安定な状態のトップだ。

同時にこの数字は、2位であっても市場に影響を与える水準値として、相対的安定シェアとともに目標にされている。ちなみに「市場に影響を与える」とは、ある企業が新商品を投入したり、キャンペーンを行うなどして動きだすと、競合もそれを無視し切れず、同調、あるいは対抗手段をとらざるを得ない状況をさす。また、不思議なことに、この水準のシェアをとっていて3位以下というケースはない。

(一位の場合)

松下通信工業 23.9% 携帯電話端末市場
富士通 28.1% 汎用コンピュータ市場
松下電器産業 26.0% 電子レンジ市場
ミズノ 29.1% ゴルフクラブ市場

(二位の場合)

TDK 26.0% ミニディスク市場
三洋電機 29.0% リチウムイオン電池市場
日本通運 23.0% 腕時計市場
ミノルタ 23.6% 一眼レフカメラ市場

(4)10.9%……市場的認知シェア

市場においてようやく存在が確認される水準。
つまり生活者が「こういうブランド(企業)もある」と思いだしてくれるレベルである。これ以下では、生活者の記憶にも残りにくい。

NEC 12.0% 携帯電話端末市場
東芝 11.0% ルームエアコン市場
日本ビクター 11.0% ビデオテープ市場
東洋ゴム工業 10.9% タイヤチューブ市場
サンヨー食品 10.9% 即席めん市場

(5)6.8%……市場的存在シェア

市場において、ようやく存在を許されるシェア。これ以下のシェアでは、今後よほどの成長が見込まれない限り、市場から撤退する方が賢明である。この水準では、生活者が、他人に言われてやっと思い出す程度の知名度しかない。

『ランチェスター戦略』を著した田岡氏によると、1960年代にGE(ゼネラル・エレクトロニクス)がSBU(戦略ビジネスユニット=事業本部制)を採用した際、自社製品のシェアが6.8%以下で、競合企業に40%以上のシェアを握られている商品については市場から撤退したという。

京セラ 7.1% 携帯電話端末市場
オーツタイヤ 6.6% タイヤチューブ市場
ポッカコーポレーション 6.6% 缶コーヒー市場
明治製菓 6.2% スナック菓子市場
コーセー 6.6% 化粧品市場

例外 : 2%

以上が「クープマンの目標値」だが、『ランチェスター販売戦略』を書いた田岡信夫氏はさらに、市場的存在シェアを下回る2%台の数値にも注目している。

たとえばスーパーでは原則的に春と秋に商品の見直しをする。売れ筋商品は棚に残し、売れない商品は棚から出して、代わりに売れそうな品物を入れる。これをスクラップ&ビルドというが、田岡氏は常に2%の商品を出し入れするのが最も効率がいいと主張している。とりわけファーストフード店やコンビニなどのチェーンストアでは、スクラップ&ビルドの比率が2%〜3%である場合が多いという。

私の経験では、2%程度の人がある行動を起こしたときに、まず、雑誌で取り上げられる傾向がある。たとえばセックスレスカップルやイエローキャブなども、およそ2%の該当者が出現したときに、雑誌などが注目して、トレンドにまつりあげた。

こうして雑誌で取り上げられた事象は、次第に他のメディアに浸透し始める。そして6%を超えるとテレビでもとりあげられるようになる。しかし10%を超えると世間でも広く知られるようになるので、次第にメディア離れが見られ始めるのである。

「クープマンの目標値」を知らなくても、長年の経験によって、同じようなセオリーを培っている企業もある。おおむね成功している企業のセオリーは、「クープマンの目標値」と不思議なほど一致している場合が多いのである。しかし、大多数の企業は、マーケティング戦略の具体的な判断指標を持たずに苦労しているようだ。また、シェアに見合わぬ戦略を実行しているために低迷している企業も多い。そんな企業には、ぜひ、この明解な法則を参考にしてほしいと思う。

【注】このパートは「シンプルマーケティング」(翔泳社)から抜粋しました。

【注2】データ出典 : 「市場占有率99」(日経産業新聞編)